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たとえ張りぼての日差しでも

家に一人、ぼんやりとしている。それだけで気が滅入る。
太陽は着慣れたタンクトップとジャージを身につけ、ランニングシューズの紐を結んだ。
息を吐き、扉を開ける。日の傾きはさらに増していた。紅葉色の景色に向かって走るのは初めてだった。
「ふっ…ふっ……ハァ…」
最初はゆっくりと、徐々に吐く息のリズムを整え、スピードをゆるやかに上げていく。ぐんぐんと、背中のメゾンが小さくなる。
外の景観、見慣れた筈の姿が違って見えた。
時間が違うから、景色が違うから、どうなのだろう。本当は、何よりこの眼が違うからなのかもれしれない。

日はその間もどんどん落ちていき、長く伸びた影が薄らいでいった。もうすぐ夜が来る。
公園に差し掛かる頃には、もう赤い色も残っていなかった。パッと、自動灯の明かりが一斉に点いた。夜が来たのだ。

「この公園、好きだった…」
自分が、ではない。あの人がだ。
野良の動物がいる、今時珍しい自然の色が濃い公園。茎爾さんは決して自分から言いはしなかったが、動物に好かれ、また彼自身も動物が好きなところがあった。憩いとして、彼はここを好いていた。

そんな場所で、自分は求めたことがある。

『ご主人様、ど、どうか…もう』
彩色の遊具の横を見る。確かあの場所だ。あそこで、跪いたのだ。
鬱陶しげな眼に睨まれたが、その蔑んだ顔すら快楽だった。
「なんやお前、こないな場所でも発情しよるんか」
「はい、はいぃ!申し訳…っ!」
言い終わる前に蹴飛ばされ、濃く焼けた肌が砂にまみれた。チャリと小さく、鎖が音を鳴らした。音の元は、今日に限ってジャージで隠した首からだ。
そこに隠れていたのは、太い首に見合うような、ゴツゴツとした大きな首輪。
大型犬の散歩に使うようなそれだった。
「あぁ…はっ、あ…見られ…」
転び、乱れ、剥き出しになった首。犬の本性が覗かれる。見られてしまう。

ゾクゾクと、体を悦びが這った。
それに従うままに、自ら望んで四つん這いになる。
屋外で教師たる男が、犬に成り下がっている。
その事実が心を溶かし、赤いジャージの中央を先走りとなって濡らした。

「ごしゅ、じんさま…」
下着ごとにジャージを下げ、日に焼けた尻を茎爾に晒す。
子供の為に作られたオレンジ色の小山に手を付き、とろりとろけた目で振り返った。
「…我慢せい」
「ああ、どうか…!どうかお願いです!今すぐ、今すぐ罰してください…!」
罰を与える事を強要した。倒錯した関係の、気の違えたような光景だ。
望みは、さして待たずに叶えられた。
「ひっ…おお!」
バチンと耳に、皮と皮とがぶつかり、肉が弾けて波打つ音が届く。下半身に響く痛みに、口から涎が零れて飛んだ。
「あぁ、あぁ…はぁ…ひぁあ」
嬲られる悦び震えながら、何度も何度も、次を、求めた。
直接的な快楽がないのが、またどうしょうもなくたまらなかった。欲望だけを一人つのらせ、それでも肉棒や菊門には何の刺激も与えられない。
早く求めてしまいたい。
乱れて、壊れて、感じたい。
そのせめぎ合いで、潰えていく正気に身悶えた。


「んっ…ぅ」
甘い妄想に取り憑かれ、太陽は身を捩った。
気が付けば、赤いジャージの中央を固く肉棒が押し上げていた。顔が熱くなる、羞恥と情け無さが半分だった。今は誰かに命令されているわけではない、自慰のような妄想で一人昂ぶらせる中年とは、どこまでも情けなく感じた。
「なんとか…せんと」
いくら日が落ちているとはいえ、こんな格好でブラつくわけにはいかない。

車避けの横を通り、太陽は公園の隅にある給水器へ歩いた。固くなった肉棒が、皮の中でぬちぬちと湿った音をあげている。
隠さなくてはという理性と、晒したいという欲望とが暴れていた。しかし今の太陽には、制することが出来た。理性が勝ったのではない。一人であるという虚しさが、身に染みただけだった。
蛇口を思い切りひねると、水が上向きに飛び出した。顔を水に打たれ仰け反るが、緩めずに上体を元に戻した。頭の上から水を被る。
「ハァ…ハァ」
冷たくて、気持ちがいい。
文字通り頭を冷やしながら、目を強く瞑った。瞼の裏側から、日が落ちるのを見つめていた。

独りになったが、一人になることはなかった。どこを見て、何を思っても、常にあの人の影がいた。もう忘れなくてはならない。それが彼の為に出来た最後の、ただ一つの贖罪なのだから。
ただ、どこへ逃げればいいのだろうか。
何をして、幸せを求めればいい。
どこへ走ろうとも、答えは用意されてはいなかった。



殆ど運動にもならず、太陽は濡れた体と心を抱えてメゾンへと帰ってきた。
玄関を開け、靴を脱ぐ。下を見ると、靴が一足増えていた。
「ただいま」
返事が返ってこないのはいつものことだった。小さな足をドタドタとさせ、駆け寄ってきたのはいつまでたったか。もう思い出すことも出来ない。

ジャージを脱ぎ、洗濯かごに放りこむ。薄生地のタンクトップは汗と水で透けていた。肥大した乳首が押し上げて、惨めにいやらしい。ベタついて気持ちが悪い。
丁度いい、時間の都合も重なっている。
「少し早いが、行くか」
銭湯で汗を流せば、気も少しは晴れるだろう。石鹸、タオル、諸々が入った洗面器を手に取ろうと、太陽は屈みこんだ。
「ん」
後ろから、ぬっと影が差した。振り返ると少し高い背丈が照明に影を作っている。
「ああ、どうし、た」
見上げた息子の体は、幾分か迫力を増していた。
背丈が越えられたのは数年前だが、いつの間にか体格も子供らしさが消え、がっしりとしたものになっていた。子供と大人の中間。青年が雄へと変わるその時期なのだ。体育教師として分かりきっている筈なのに、息子の変化に真の意味で目を向けてはいなかった。
そのくっきりと筋肉のついた腕が、太陽の太い腕を掴んでいた。掌も人並み以上だ。

「な、なんだ…?」
掴まれた腕の力が痛いほどで、動揺が口に出た。自分から距離を詰めることはあれど、こうして息子の、秀太郎の方から近寄って来たことなど、それこそ玄関での妄想に等しい。
「親父よ…、その…」
目はまっすぐ、それこそ射抜くように向いているというのに、反して言葉は濁っていた。もごもごと、持て余すように口を足踏みさせている。
「………風呂、行くんだろ」
そう一方的に言い切ると、秀太郎は太陽の腕から洗面器を奪い取った。二人分を重ねてタオルを放り込む。太陽があっけに取られているうち、秀太郎は玄関へ向かってしまった。
「お、おいこら、待たんか!」
珍しい、最近すっかり恥ずかしがるようになったというのに。今日は特別機嫌が良いのだろうか。
あまりに急な出来事だ。戸惑いはあったが、それでも悪い気がする訳がない。真っ直ぐに歩いていく逆三角な背を、太陽は急いで追った。

「や、どうも、お二人お揃いで」
「ああ…こりゃどうも。こんばんは」
丁度部屋の扉を閉めた頃、二人は隣室に住む道明寺と鉢合わせた。
「仲がよろしいこっですね」
そう続けた顔に邪気はなかったが、太陽はおおいに慌てる事になった。
からかわんでください。
折角珍しく上機嫌な息子が、あっという間にへそを曲げてしまう。
どこかが弱ると、人間どこまでも怯えてしまうようだ。殴って育てたような息子の機嫌に、太陽は怯えていた。
「悪いかよ」
しかしそんな思案とは裏腹に、後ろからは意外な言葉が聞こえた。
あまつさえ、まるで恋人にするように肩が抱きとめられる。
道明寺は一瞬驚いたようだったが、まいったなあと、客商売特有の軽い笑顔で頭を掻いた。それじゃあ邪魔なようで、そんな軽口を言いながら、部屋へと戻っていった。

「しゅ、秀太郎…」
本当にどうしたのだろうか。
今もまた、秀太郎はさっさと歩いて行ってしまっている。しかし後ろからでも、赤くなった耳が見えた。そんな思いまでして、こんな冗談めいた事をするなど、本当にわからない。
そもそもこうして秀太郎から誘ってきた事自体初めてかもしれないのだ。何かあったのだろうか。
小遣いの催促か、悪戯の罪滅しか。

馬鹿か、私は。
どの案も、高校生の息子にするには幼すぎる。
太陽はボリボリと頭を掻いて、ふと、両腕が寂しいことに気がついた。何も持っていない。普段銭湯へ行くのと違い、洗面具も何も息子に持たせてしまっていた。
「ああ、すまんかったな、ホラよこしなさい」
「いいよ、持ってやる」
伸ばした手は払われ、洗面具を抱えた腕は遠ざけられた。
親の私が思うのもなんだが、不躾な態度だ。しかし、間違いなく優しさだ。
むず痒い程だった。
息子だけではなく、誰かに優しくされたのは本当に久しぶりだった。
「親父」
「なんだ」
「や…なんでもねぇ……」
暗く肌寒い夜道を、息子と父がどこか距離を置きながら肩を並べている。
その気まずささえ、世にありふれたものだった。こうしていると、普通の家族のようだ。まるで。
ずっと欲しかった、ごく当たり前の幸せがある景色だ。

「…おかしいぞ、最近」
なんでもない、という事はやはりないようで、秀太郎は結局ポツリと呟いた。
おかしいと言いたいのは太陽の方だったが、しかし心当たりがないわけはない。
奴隷としての立場を失い、日常を送りつつも、精神は半ば抜け殻と化していた。
あくまでひた隠し、特に息子にはバレないようにしてきたが、彼との関係がなくなり、隠そうという気概も薄れていた気もする。
エゴまみれの人間だ。そう生きてきた。
結局、学校では生徒に犯され、息子には大切な事は何もしてやれていない。

「やめろよな、そういうの、……調子狂う」
あまりに意外な言葉だった。つき刺さるようだった。
「らしくねえよ」
らしくない。
そう言われても。その「らしい」自分は隠れ蓑としての自分だ。体育教師の真っ赤なジャージで、浅ましい肉欲を溜め込んだ体を隠していた自分だ。えらぶって親父面をするのも、口うるさい体育教師も。

「らしくない、か」
「…おう」
本当は薄汚い、本当に汚らしい生き物。それを誤魔化していたにすぎない。息子に胸を張ることなど到底出来ない。
汚らしい豚だと、喜んで自分で受け入れるような男だったんだ。

常識人として生きてきた津久井太陽を思い出す。あれは私だったのかと、気持ちに正直なるとすれば否であった。
違っていた。

しかし、
「…痛ってっ!」
「…、らしくないとはなんだっ!それが親父に向かって言う言葉か!」
「ハァ!?なんだよ突然!」
わざとらしかっただろうか。
久しぶりに殴った右手をジンジンとさせながら、太陽は歯を見せて笑ってみせた。笑った真似をした。

しかし、息子がそう言うのだ。
子供の理想通りに生きようとするのは、どんなに不器用で不自然でも、自然な形だ。親父なのだから。
今更なれないかもしれない。けれど、それでも、息子は口うるさい親父を望んだのだから、ほんの少しの甘えを見せたのだから。

こいつの親父なのだ、私は。
もう少し、真面目を絵に描いてみよう。まだ余白の多い息子のキャンパスを、せめて汚さない程度に。

「それじゃあ、競争と行くか」
「あ?」
「競争だ、競争、かけっこ。銭湯までな!」
「いきなり何いってんだよ!んなガキみてえな事…!」
「遅れたほうが今日は奢りだ!ごちゃごちゃ言っとると置いていくぞ!」
「それ俺が一方的に損じゃねえか!」
何度も置いて行かれた仕返しとばかりに、太陽は強引に走りだした。
慣らしもせずに走った中年の体だ、息は乱れ、汗は流れた。とびきり下手くそなランニングになった。

笑った真似をした頬がまだむず痒かった。しかし、悪い気はしなかった。
ご主人様は、茎爾さんはいつも合わせて無理をしていた。こんな気持ちだったのだろうか。こうして、誰かの為に自分の本心を削るというのは。
心地良いばかりではない。
しかし、決して苦しいばかりでもなかった。
彼はどうだったのだろう。

今の太陽には、ただそれを願うしかなかった。




  1. 2010/10/11(月) 04:56:01|
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